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チューリッヒ発寝台列車⑤(スイス)

ようやく5月13日

バーゼルから乗ってきた親子が早朝降りていき、しばらくベッドでダラダラしていた。 
朝日が差し込み 徐々に車内は明るくなっていく。 陽も十分に昇り、上段で横たわっている物静かな青年と ベッドをたたんで座席にした。
昼夜の視界がまったく違って思えるのは、夜行で朝を迎えたからだろう。

しばらくぼーっと車窓を眺めていた。
車掌が伝えに来たのか 私が聞いたのか覚えていないが、青年は今まで聞いたことのない駅で降りていった。

コンパートメントに誰もいなくなり、思う存分続きのダラダラをするなり 写真を撮るなり コーヒーでも優雅な朝食でも取るなりすればいいのに、私はハンブルグに到着するまで ずっとパッキングをし続けていた。

スイスでは荷物を先発で送り続けていたので、久しぶりに担ぐと驚くほど重かったし 正直どうにも無理で、完全に持て余している状態。

ハンブルグに到着。
気合で大荷物を前後に担いで部屋を出ると、足元にシーツが散乱している。〝何これ?〟
さっきから騒がしいなと思っていたが、両サイドの部屋のおじさん達が シーツの端を持って引っ張り合いっこしたり ドアノブにくくりつけたりして、大騒ぎしていた。

彼らの目的は全くわからないが、どうりでさっきから部屋の扉がしまらなかった訳だ。
〝何という地獄でしょうか あなた方がここでやっていることは。〟と驚き、〝私の部屋(にくくり付けられているシーツ)は取ってください。終点のハンブルグですよ。〟と言って、寝台列車を降りた。

残念ながら、このCNLは2016年12月で廃止されているらしいです。
代わりにユーロナイトが同路線を走っている様で、それでもCNLに乗りたいのであれば チューリッヒよりドイツ寄りの駅からハンブルグ行きを探すのも手だと思われます。
いやいやチューリッヒからCNLに乗りたいんだというならば、チューリッヒ~ベルリンをどうぞ。(私は既にベルリンを訪問しているので利用しませんでした。)
ついでにチューリッヒ~オデンセの路線とチューリッヒ~コペンハーゲンの路線は、ハンブルグ先より違いますので、私のルートだと遠回りになるかもしれません。
チューリッヒ~コペンハーゲンの時刻表で確認してみてください。
というわけで、チューリッヒ発ハンブルグ行き寝台列車CNLは変更されているので ご注意ください。 
以上お知らせでした。

(続く)

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チューリッヒ発寝台列車④スイス

5月12日

重低音の後に高音のブレーキで、深夜に突如停車する。
私はふと目を覚まして、カーテンの隙間から名も知れない駅の静寂を眺める。何ともいえぬ旅情ある空間と時間を感じるのだ。

バーゼルから乗ってきた親子は〝ハロー〟と言って、下段の両サイドのベッドを整え始めた。 彼らが一段落すると、私は鍵と電気の説明をし 少し話をしたものの共通の話題もなさそうなので、サッカーか何かの話をしたと思う。

大学生の息子はスマホばかりだったが、英語が話せる母親の方は、真上に寝ているアジア女の裾を引っ張り〝ねぇねぇ。〟と話しかけてくる。
興味の対象は、他でもない廊下でビールを飲んでいるおじさんのことだ。

〝マダムバーゼルは、廊下で車掌と黒ずくめの男がもめているのを見たのですな。それもこの部屋の前で。〟〝ねえねえ。アイツキップ持ってないんだって。〟
横のベッドはキチンとシーツがかけられ、その上にジャケットとキップカバーが乗せられている。
マダムバーゼルの証言はまだ続く。〝ねぇねぇ。アイツキップ無くしたとか言って、お金支払いたくないってさ。〟〝オーラㇻ。ますます怪しいですぞ。〟

私は名探偵ポアロでもないし、どちらかといえば私の玉虫色の脳細胞は〝もぉ車掌が何とかするやろ。寝たいわ。〟
私は半開きのドアを閉めた。

この電車は国際電車なので 乗客リストで把握できているだろうし、国や時間帯に差こそあれ 欧州鉄道の車掌はきちんとしているので、任せるに限る。
途中乗込んできた鉄道警察とともに大男が列車を降りると、
〝ねぇ。明日5時起きだから寝るわ。おやすみなさい。〟こうしてマダムの囁き証言は終わった。

一体何時なのかわからないし、その後も夜中乗ってきた上段の青年に鍵と電気の場所を教えたり、頻繁に出入りするバーゼル青年が戻ってきて扉をノックしても マダムバーゼルは一度も起きてこないので、代わりに中段の私がいちいち開錠しなければならなかったり、一晩熟睡できる状態ではなかった。

カーテンを開けると 射光がマダムバーゼルに真面にあたり起こしてしまうので いや起こさない方がいいので、私は旅情すら感じられない。

(続く)


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車窓

チューリッヒ発寝台列車③スイス

5月12日

シティナイトライン通称CNLは いくつか路線があり、私はチューリッヒ~ハンブルグ路線を利用した。始発駅ということもあって 20:42発ほぼ定刻通りの出発。
私はベッドメークや夕食のブルベリーパイとワインを速やかに終ると、食堂車に水を買いに行き スイスフランを全て使った。

部屋に戻ると大柄のおじさんがいて しばらく廊下で待っていたが、なんだか様子がおかしい。というよりもかなり怪しい。
上下黒皮のジャケットに赤毛の髭もじゃ、通路に立たれると部屋にすら入れないほどの巨漢、酔っぱらってフラフラで目もすわっている。
片手にビールの大瓶を持って シーツを敷いているのは私と同じ中段で、ということは夜中に寝返りをうつと 目の前におじさんがいることになる。

確かにドイツの夜行は危ないとは聞いていたが、コーチの話ばかりで まさか寝台個室までとは。
ギリギリまで閉められていた部屋に よりによってこんな悪役レスラーみたいな大男をいれるなんて 一体どういうつもりなのかね。

私はしばらく通路に立っていたが、フーゴーと呼吸する大男に声をかけた。
〝私のベッドここだから。〟車掌の説明同様に〝夜中は施錠してください。部屋の電気はここです。〟と言い、もはや危険は部屋の外なのか内なのか よくわからない状況ではあるけれど、とにかく防犯の重要性や安全の大切さについて十分に説明し そして念を押しておいた。
ここで気づいたのは、この大男は英語がわからなかったのだ。

最初男は酔っぱらって視点も合わず理解しようともしなかったが、私のジェスチャーで何度か説明を重ねるうちに おじさんも手順を確認し、外に出る用事がトイレやタバコやビールといった具合に その都度変えて理解した。
最小限のコミュニケーションも取れるようになり、ようやく私はベッドで寛いでいる。
今後寝台に乗るつもりなら、悪いことは言わないが 中段はやめておいた方がいいと思う。 同室がどのような人かわからなくても、夜中の出入り毎に開錠しなければならないからだ。

私が部屋に入り、おじさんは廊下に出て 続きのビールを飲んでいる。
本当に長い一日だった。 
今朝、グリンデルワルドの宿でアイガー北壁を眺めていたことすら 遠い昔の様な気がする。もうハンブルグに着いてもいい頃だろうとさえ思えてきた。

防犯用にズボンを重ね履きしていたら、バーゼルから大学生くらいの青年とその母親らしき女性がやってきた。

(続く)


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寝台


チューリッヒ発寝台列車②スイス

5月12日

〝僕らも部屋が無いらしい。〟と言って、少し話をした。
彼らはヘルシンキからやってきた青年とドイツ女のカップルで、今はドイツに居住し これから彼女の実家かどっかに行くみたい話だったと思う。

主にヘルシンキの青年が話をし、一様ドイツ女にも挨拶したが やはり眉間に皺を寄せて不快感を示していたので話はしていない。
しばらくするとドイツ女は〝ダーリン!私たちの部屋はあったわ!〟と満面の笑顔で部屋から顔を出し、手を振りながら何度か連呼し小芝居を終えると ようやく部屋の中に消えて行った。
腐ってもドイツ人だ。

色々な国の寝台や深夜バスに乗ってきたが、欧州の列車は快適とは言えず しかも高い。

とにかくスイスからデンマークに行くには、エアでチューリッヒ~コペンハーゲンを利用するのが便利だし、特に女性なら尚更だ。
出来れば私もエアにしたかったのだが、
チューリッヒホテル代、エア代(エアポートリンク)、コペンハーゲンホテル代、オデンセ電車代(往復)と結構な出費になってしまう。

レイルパスだと効率的で安上がりなので、前もって計画していた。
今日スイス(2か所下車)~ナイトトレイン(チューリッヒ発ハンブルク行き)~明日デンマーク(オデンセ下車)コペンハーゲン夜着。 
これだと寝台のみ予約を入れれば良いだけだ。

まず私はベルン駅の窓口に行き〝シティナイトライン○号の2等一枚お願いします。〟絶望的な答えが返ってきた。
残すは究極の選択①めちゃくちゃ高い1等②ノーセキュリティのコーチ
私は勇気を持って①および②の順番で聞いてみたが〝ソルドアウト!〟デデーン♪ 
一席も無いなんてあり得ない。

私は今夜普通電車を乗り継いで行く旨を伝え、可能な時刻表をプリントアウトしてもらった。
24時間後にコペンハーゲンに着こうが ドイツの夜行は危ないから女性は決して乗らない様にという注告を知っていても とにかく一刻も早く西欧を出たいという思いがまさっていた。

この数日で盗難2回に食中毒、その前を振り返ってもロクなことなかった。えぇえぇ乗り切ってやりますとも。
威勢よくチューリヒに着き 2、3時間チューリッヒ駅で時間潰し序に窓口で聞いてみた。
〝今夜シティナイトライン○号の2等ありますか?〟〝一席ならありますよ。〟
ベルン駅でのやり取りを言ってみたが、寝台に乗れるようなので、 う~ん予約した。

そろそろ発車時間だ。
ホームから車掌が浮かない様子で戻ってきて じゃらじゃらっと部屋の鍵を開け、部屋の使い方を説明し去って行った。
こうして予約書にある開かずの部屋は、開けられたのだった。

(続く)


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1時間以上後ろに

チューリッヒ発寝台列車①スイス

5月12日 

いよいよ西欧ともお別れだ。
20時過ぎホームに電車が入ってくると、私は列車のステップを上がり 急いで部屋を見つけたが かんじんの扉が開かない。

周囲を見回すと 他の部屋には入れている様なので、同様に部屋を探す人々の間をぬって 入口の車掌に声をかけた。〝部屋閉まってるんですけど。〟

私は車掌に予約書を渡して 他の車両に行っては断られを何度か繰替えし、聞いてもらうのは有難いけれど 結局バウチャーは何なんだと思わざるをえない。

40kg以上ある荷物で 段差のある列車に乗降りを繰り返していると、さすがに息が切れた。 
しばらくすると車掌同士が集まってホームで話し始めたが、すぐに揉めているのがわかった。 

もうじき出発時間なので こうして戸口に座り込んでいるしかない。
すると長身のブロンドのカップルが声をかけてきた。〝僕らも部屋がないらしい。〟

(続く)



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